中国料理店をいくつか


中国料理店を何軒か紹介しよう。もともと広く多く情報収集するよりは、気に入ったところに入り浸るタイプなので、店の数はあまり多くはない。

ここ東京は料理店の数と種類が異様に多く、また諸外国と比べても外国料理のレベルはかなり高いと言える。中国料理店についても、いくつかの日本の中国料理店は、本場中国、あるいはその中国よりレベルが高いと言われている香港よりもレベルが高いと言われるほどである。

これに対して東京の良くない点は、外国料理をおいしくし過ぎることだと思う。どの料理を食べてもおいしいにはおいしいのだが、その国の料理独特の臭みを徹底的に抜いてしまったような料理が目立つ。日本はもともと喰い物におけるこの「独特の臭み」を大切にしてきた民族のはずだが、他国の料理のアレンジについては徹底してニュートラルなものを追求しているように見える。

よくテレビなどで中国本土の料理を紹介しているところを見ると、高級料理店であっても何か独特のいかがわしさが漂っているように見えるが、あの快感を東京で味わうことは諦めなければならない。実際、最近香港によく出かけるようになってから、日本で中国料理店へ行く回数がめっきり減ってしまった。中国大衆料理は、例えばロンドンのソーホーへ行くと近いものが食べられるが、日本では中華街へ行ってもだめである(もっともイギリスは自国の料理が良くないからああなるので、日本とは事情が違い過ぎるが)

結局、東京では高級料理店だろう。東京で安心なのは、高級な構えの店に入ればまず失敗しないということだ。なるべくアラカルトで注文することをお勧めする。コースにするときは最低でも1万円、できればそれ以上のものを選ぶべきのようだ。高級な構えの店では、金を使わない客(顔見知りは別)に対しては非常におざなりな対応をするからである。高級料理店で修行をした料理人が料理長で、店構えが中級以下の店が実際は一番よいと思う。以下の店はほとんど高級料理店である。あしからず。また、道順その他はぴあマップなどを参照して頂きたい。


翠園酒家

新橋駅から歩いて10分

この店は教えたくなくなるような良い店だが、紹介しよう。本店は香港のチム・シャ・ツイにあり(Jade Garden Restaurant)、ここはその支店で、老舗風の豪華さがある。店内の雰囲気、装飾、ウェイターの服装、態度、テーブルセッティングに至るまで、まるで香港の料理店に居るかと錯覚するようなところである。料理は、これはもう完璧に香港の広東料理の味。これがなかなか他の日本の広東料理屋では味わえないのである。夜でも飲茶のワゴンサービスをやっており、素気ない丸テーブルの客席の間をステンレスのワゴンが回り、あまり愛想のないウェイターがすたすたと歩き回る様子は、まさに香港だ。料理の香り、味、見た目とも非の打ち所なし、非常に美味。ただし値段が高いのは東京だから仕方ないか。


六本木四川飯店

六本木駅から歩いてすぐ

本店は赤坂で、ここは支店。総料理長は料理の鉄人で有名な陳建一である。四川料理はご存じ辛い料理が有名だが、ここの料理は日本向きにアレンジされ、またいわゆる高級中国料理としてまず万人の口に合う丁寧で非常においしい料理に仕上がっている。


慶楽

有楽町駅から歩いてすぐ

広東料理。店内は素朴な装飾で、給仕はみなおばさんで、実に庶民的な店であるが、料理は本格的な風格のある立派な高級料理店である。一皿の量が少なく値段も高いが、どの料理も、香港の広東料理ともまた違う独特の香りがあって素晴らしい。


原宿樓外樓飯店

原宿駅から歩いてすぐ

上海料理。日本向きの素直な味になっているが、それでもショウユの色が濃く、甘辛く油気の多い料理はやはり上海料理である。本店は赤坂。


中華街上海飯店

中華街目抜き通り中程の路地入る

ここは高級料理店ではない。昔、中国料理の勉強を始めたころよく通った店。カウンターと二卓の小さな店で、カウンターに座ると調理しているところを見ることができる。料理人のあんちゃんは独特のゆったりした動きがとても魅力的である。料理は量多く安く、味もストレートで、下手な高級料理店よりはるかに満足できる(僕の印象では、特に中華街にはいわゆる下手な高級料理が横行している)こういう中華料理屋がもっと増えてくれるとよいのだが。


璃宮

地下鉄赤坂駅からすぐ

言わずと知れた周富徳の店。最近この店の評判はさんざんだが、その昔行ったときは料理の印象が非常に新鮮で印象的だった。一口で言って最高の素材を使った大衆料理といった感じである。ここは明らかな高級広東料理店だが、それ故にこのコントラストはとてもよいものであった。(その後、料理長が代わり、内容もずいぶん変わったと思う)


知味竹爐山房

吉祥寺駅から歩いて5、6分

非常に繊細な中国料理。最近の東京では、何料理を問わずにこういう料理長のセンスのしっかりした、そして料理長の目が隅々まで行き届いている小さな店が増えた。コースで次々と出てくる料理は、アイディアがよく、きれいで、美味しく、いちいち感心してしまう。値段もかなり安い。難点と言えば難点が無いことかもしれない。個人的には、大雑把で大陸的な中国料理の方が僕は好きである。


東華菜館

阪急河原町駅からすぐ(京都)

北京料理。まず、5、6階建ての堂々としたいかにも老舗のモダンな建物が素晴らしい。鴨川沿いで眺めもいいし実に落ちつける店である。料理は繊細さはないが、鷹揚とした、度量の大きさを感じさせる、素朴な仕上がりである。あるいはこのノリは確かに中国本土のもののような気がする。


民生

神戸中華街

関西風広東料理。関西の広東料理は独特の風味があり、面白い。特に炒めものは、汁気が多く、基本的には塩味で、少量のショウユを落とすのが特徴である。この手の料理で有名な店ではハマムラがあり、大阪店が多分本店だろう。ここ民生は、店内の雰囲気も庶民的で、値段も安く、いつでもその辺のおじちゃん、おばちゃん達で賑わっていた。震災後どうなっただろう。


杏花村

元町から山側(神戸)

大衆料理。引き戸に看板ひとつのひどく素気ない小さな店である。どうやら現地中国人が飯を食いに来る所らしく、壁には中国語のみの料理名が列挙してある。値段安く、味よく、よい店である。


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