スウェーデンで仕事をはじめて移り住んでなんともう7年目になるのだが、およそ6年ほど前、ここに住み始めたとき、「スウェーデン生活」というFacebookページを開設した。そこで、見聞き経験したことなどを写真とともに紹介していたのだが、今回、そのページの記事をすべて集めて、整理して、加筆修正して、一冊の電子ブックとして出版した。
僕の住んでいるのは、スウェーデンの本土ではなく、バルト海の中央に浮かぶゴットランド島という大きな島である。ゴットランドでいちばん大きなウィスビーという街にいるのだが、ここは、バイキングの中世の様子をそのまま残していて、街全体が世界遺産に指定されている、一級の観光地でもある。日本では、かの魔女の宅急便の背景になったところとして有名な、極めて美しい場所だ。そんな美しい街並みや、遺跡、あたりに広がる自然の写真をふんだんに載せ、内容的にも気軽に読める本になっていると思う。
とまあ、そういうわけで、自分としては珍しく普通の本になっているわけで、批判的な言動はほとんど載せていない。でも、6年も仕事をして住んでいれば、いろいろたくさんの「批判したくなる」内容のことを経験しているわけなのだが、Facebookページにはそういうものは意識的に書かなかったのである。今回の書籍化のときも、そういうものを避けたので、まあ、なんというか自分らしくない本と言われれば、そうだ。もっとも、昨今、日本でよくある、北欧理想国家的なそういう誉めそやしはあまりなく、率直に自分が実地に経験して良いと思ったことだけ、書いているつもりだ。一方、経験して「イヤだな」とか思ったことは、意識的に書いていないだけだ。
そういうことなので、この本は僕にとっての「スウェーデンの明るい面」を描いた本と言えそうだ。次に出版するとしたら、そのカウンターにあたる、僕にとっての「スウェーデンのダークサイド」を書き綴った本でも出したいものだし、まあ、ダークサイドまでいかなくとも、アジア人の目で見た北欧、という切り口で書いたら面白かろう、とは思う。ただ、ネガティブ面を書くのはいろいろな面で大変なので、気が向いたらいつか、ということにしておく。
2019年2月 林正樹