次のデルタブルースマンはウィーリー・ブラウンです。
写真は残念ながらありません。この人もやはりドッケリー牧場で、チャーリー・パットンの相棒として演奏してました。特に、セカンドギターとして参加することも多く、パットンの録音でも何曲もギターを弾いています。
それで、ブラウン自身の録音はなんと2曲しか残ってないんです。1930年のパットンの録音のときパットンに連れられウィスコンシン州のグラフトンで、単独吹き込みで6曲レコーディングしたそうですが、残っているのはここに音源を上げた2曲だけです。
実は、もう一曲バラード的なMake Me A Pallet On The Floorがブラウンなのが確実な音源があります。それ以外に数曲、Willie Brownとして、あるいは別名で録音がありますが、確実なところは分かりません。録音された6曲のうちリリースされなかったと思われる4曲も、SP盤のなんらかの形でどこかに存在しているのは確からしいのですが、今のところ表には出て来ていません。
たった2曲しかないのに、なんで取り上げたかというと、まあ、これは個人的には、なのですが、僕の考えではこの2曲がデルタブルースの最高傑作に思えるからです。歌といいギターといいすばらしいの一言です。特に歌が本当にすばらしい。
ちなみにブラウンのギターのうまさは当時も評判だったらしく、このあとに出てくるサン・ハウスも、ブラウンの方が師匠のパットンよりうまかったよ、と証言しています。ただ、録音曲数も少ないし、写真もないし、それほど知られている人ではありません。
このM&Oブルースとフューチャー・ブルースは、それぞれパットンのポニー・ブルースとハイ・ウォーターのブラウンによる解釈です。たしかに、キーも、歌のメロディーも、演奏も同じ系統の曲なのですが、聞いた感じはまったく違いますよね。音楽の消化の仕方が半端でないです。
さて、まずM&Oブルースですが、なにげないメロディーなのですが、実際に歌ってみると分かるんですが、これを歌うのは非常に難しいです。それに加えて、このミシシッピー川のゆっくりした流れのような淡々としたギターの伴奏がいいですよね。
お次はフューチャー・ブルースです。こちらのものすごい歌いまわしをぜひよく聞いてみてください。リズムといい、シャウトの仕方といい、歌詞の畳み込み方といい完璧です。しかも田舎臭いところが今聞いてもぜんぜんなく、非常にモダンです。