相性

だいぶ昔、とある街に住んでたころ、とある呑み屋つながりの人々とあれこれ遊んでいたことがあり、そのときの話。その呑み仲間のなかに、明るくて元気でよくしゃべるおばちゃんがいて、あるとき、そのおばちゃんに誘われて、家に皆で遊びに行ったことがあった。おばちゃんはバツイチかなんかで、そのころ彼氏ができて、その彼氏がむかし飲食店で板さんやってたから、料理を作ってくれるというのである。

で、台所から次々と料理が出てきて、たしかにどれもおいしかったのだけど、その料理が見事なぐらい、中流以下ぐらいの「ある層」をターゲットにした料理で、高級店では出て来ない味だけど、安めし屋とかの味でもない。食べてて、あまりにその「層」がはっきり感じられて、なんだか感心してしまった。不思議なもんだなあ、って思って。

ちなみに、その彼の歳はたぶん40半ばで、おばちゃんと付き合う前は仕事をしてたけど、おばちゃんの家で一緒に住み始めたとたん仕事を辞め、毎日プラプラしていたそうだ。要はヒモを決め込んだわけだ。おばちゃんはわりといいところで仕事してて、実入りもいい。その彼、ホームパーティーでエプロンして料理作っちゃいるけど、話を聞くとわりとろくでなしっぽい。でもちょっと男前で愉快な楽しい人だった。

それで、そのおばちゃんだけど、ものすごく人の世話を焼くのが好きな人で、いろいろ男と関係も多いらしかったが、まいどまいど、そういう、世話しないといけない男とくっついちゃうそうだ。本人、なんでいつも私が面倒見なきゃなんないのかしらねえ、早くラクしたいわ、とかけっこう愚痴を言ってた。で、それから一年ほどして、風の便りで、おばちゃんが彼氏と別れたらしいっていう噂を聞いた。

料理人とその料理、世話焼きおばちゃんとろくでなし男、などなど、世の中って相性って、あるんだなあ。っていうか、世の中、相性だけでできあがってるのかもね。

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