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ブルースバンドのボーカルの昔話

Ain’t Nobody’s Businessの歌を練習してて思い出した。

オレがまだ20代後半のころ、JRBというブルースバンドをやってた。昔の日本ブルースバンドの典型で、かなり真面目に次々とブルースをカバーしてた。しかしなぜだか、そのバンド、しょっちゅうボーカリストだけが替わってた印象。いま思うと、やっぱりブルースとなると、歌がいちばんのネックなんだろうね。

あるときそこに、Kさんというボーカリストが入ってきた。最初はみな絶賛だった。ドスの利いた、ぶっきらぼうな歌い方するけどクールで、僕も気に入ってた。

それで当時のバンドはだいぶ真面目で、練習のあと、ライブのあとは、必ずきちんと反省会をやってた。昨今のオヤジバンドのように、打ち上げの飲酒だけが楽しみでバンドやってるのとえらい違いで、向上心そのものである。

で、とあるライブが終わって反省会になり、あれこれ問題点を指摘し合ったのだけど、そこで、ピアノのOさんがいかにも言いにくそうに、でも思い切って切り出したのが、ボーカルの英語の発音の問題だった。「やっぱり英語の歌をやる限りは避けて通れないし、きちんとした方がいいと思う」みたいに話し始めた。

若いオレ(オレ、最年少)、それを聞いてて、さすがに、えー、よくこの話題切り出すなあ、勇気あるなあ、と思って黙ってた。Oさん続けて、ライブの後半にやったAin’t Nobody’s Businessを例に出して、後半でLord, lord, lordってやるところあるでしょ、お友だちのイギリス人が来てたんだけど、彼がその部分で何を言ってるか分からなかった、って言ってたのよ、と言った。

そこはこのスローな曲を倍テンポにしてスウィングして盛り上げるところで、ボーカルは、たぶん、Lordy, lordy, lordyってシャウトしていて、日本語だとローディ、ローディ、ローディって連呼する。

しかしそのイギリス人も人が悪いと思うな。日本語で発音するローディはLordyじゃないけど、別にそれほど問題のある個所じゃない。まー、やつらにはLじゃなくてRに聞こえて、Rollyみたいだったんだろうけど、別にあそこでRollyって言ってもいいじゃん、って思うんだけど、まー、性格の悪い外人だったのかも(クソ 笑)

とまあ、そう、Oさんが言ったら、Kさん怒って「そいつイギリス人だろ? アメリカの黒人の発音の何が分かる!」とか言ったけど、それ、やはり負け惜しみだよね。Oさん、だから、この件、言いたくなかったのよ、と言ったものの、もう遅い。なんかさあ、当時の日本の英語の発音の問題は根が深くて、英語コンプレックスと対になってることが多く、大変だったよねえ。

しかしOさんも勇気ある発言だよな。僕はちょうどそのころ大阪転勤になり、バンドを脱退したんだけど、その後の顛末を後日ドラムのMさんから聞いた。あの反省会以降、KさんがOさんをいじめはじめ、大変だったんだって。

で、ある日のライブの後、いじめがあまりに目に余るまでになって、口論になって、店出たときKさん酔っ払って喧嘩腰になり、Mさんに突っかかったらしい。ところが、Mさんは元ヤクザまがいの不良で喧嘩がものすごく強い。Kさんがかかって来たとき、即、躊躇なしに顔にアッパーカット食らわせて、Kさんひるんで、もう一回かかってたらむちゃくちゃに殴り倒してやろうと思ってたけど、Kさん、これはかなわないと観念したらしく、捨てゼリフ吐いて夜の街へ消えて行ったらしい。それ以来、Kさんの消息不明。

いやー、昔のブルースバンドは熱かったなあ。って話。